PACガーディアンズ主催定例勉強会

12月23日日曜日、全日警ホールにて 「地域における成年後見制度のよりよい利用について」をテーマに講演とシンポジウムの2部構成で、3時間半に渡って開催されました。

講演の部では、曽根准教授(日本社会事業大学専門職大学院)による「成年後見制度利用者の実態把握調査(全国版・障害者対象)」報告と名川理事長(PACガーディアンズ)による「千葉県内障害者の成年後見制度利用状況調査」報告から後見利用の課題が指摘され、それを受けて川端専門官(厚労省社会・援護局)による「成年後見制度利用促進基本計画の進捗状況」と目指す理念について話されました。シンポジウムの部では、曽根准教授、川端専門官、名川理事長に、滑川理事(PACガーディアンズ)を交えて討論が行われました。
 
【曽根准教授よりの報告】
①回答者(障害者で成年後見人利用者)の76%が40~70歳であったこと、ここから本人が40代となり家族が60代となった時に後見人選任に踏み切ると推察されること。
②同じく回答者の74%が障害支援区分5及び6と、重度障害者であること。
③後見人は45%が専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士他)、49%が親兄弟他親族であること。
④被後見人である障害者との面会について、月1回以上実施している後見人には親と社会福祉士が多く、
年2回~ほとんど行わない後見人には弁護士や兄弟姉妹他親族が多いこと。
 
【名川理事長よりの報告】

①  被後見人である障害者との面会回数について、専門職後見人の40%が年2回以下であり、ほとんど面会に 来ず、施設への連絡も無いという困った後見人も一部に見られる。
②  後見人への後見報酬が被後見人の生活を圧迫することがあり、医療費等が絡むと深刻な状況にもなる。
③  被後見人の生活を充実させるための出費が後見人に認められず、不満が募る。
④  専門職後見人は事務処理や財産管理ばかりで身上監護をしない。
 
【川端専門官よりの基本計画の報告】
①後見制度支援信託(信託銀行を利用しての被後見人の財産管理)の活用。
②労働人口減に伴う専門職減に対応する、市民後見人の育成。
③後見人の業務として、財産管理に意思決定支援と身上監護を加えたことを踏まえての、後見人の選任及び
交代の実施。
④権利擁護支援の地域連携ネットワークの構築とその司令塔役としての中核機関と市町村の在り方。
 
【シンポジウムでの議論】
①後見人の財産管理は、被後見人の身上監護を踏まえた上での「財産活用」に代わっていく。
②後見人の報酬評価は今後、身上監護や意思決定支援の実施に左右されるようになる。
③市民後見人の育成と活用、福祉職員と後見人等とその他関係者との連携と業務分担が行われるようになる。
感想として、成年後見制度が始まって十数年、まだまだ法制度の運用面は流動的、後見人たる当事者(専門職・法人等)の意識も様々で、都市部と地方との差もあり、未だ確固たるものが定まっていないと思えました。今後、法制度もその運用も運用当事者達の意識も、目まぐるしく変化していくのでしょう。我々としては、今後も成年後見人制度を注視し、研究し、議論し、経験を積み重ね、情報共有することが肝要であろうと思いました。
 
補足★PAC-ガーディアンズは主に障害者の法人後見を担う団体であり、2005年12月、専門家のネットワークに市川・船橋・松戸・習志野・流山・千葉市の親の会が協力して発足しました。受任数は現在、104件(内、知的障害の方は56%)。PAC―Gの法人後見の理念は、①本人の能力をできるだけ制限しないように援助する。
②後見人だけではなく、本人と関わる人の支援の輪がいくつも重なるようにする。
③法人後見の事務執行者を養成し、複数での受任を基本とする。

★今後に向けて;今回の定例勉強会では、後見利用の現状から浮かび上がった課題を知り、利用促進法の基本計画とその肝である「中核機関の設置や連携ネットワークの仕組みづくり」の在り方が話し合われました。市川障害者権利擁護連絡会では、学んだことを参考に、引き続き、市川での実現を目指していきます。

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