本田秀夫先生講演会「自閉スペクトラムの理解と支援~それぞれのライフスタイルに応じた支援~」

 4月13日、市川市自閉症協会主催の本田秀夫先生講演会「自閉スペクトラムの理解と支援~それぞれのライフスタイルに応じた支援~」が市川で開催され、大盛況のうちに終わりました。本田秀夫先生並びに、ご参加くださった皆様ありがとうございました!二時間、自閉スペクトラムの人の幼児期から成人期までにわたるそれぞれのライフステージでの特性と支援を学ぶことができました。自閉スペクトラムの子を持つ親として簡単に振り返ってみました。

本田秀夫先生
講演会前にキャラバン隊『空』の公演

 【あの頃知っていたら】

 講演会が終わった後、「あの頃知っていたら良かったな」と言う一人の母の声がありました。「自閉の子には、最初母子関係は意味がないとか愛着はないとか正直ショックだったけど。でも自分のために動いてくれる人へ信頼はあるっていうことを、診断を受けた頃に教えてもらいたかった。そうしたら、あんなに悩まなかったし、悲しまなかったかも。」と彼女は言うのです。

【白鳥の子を育てるアヒル親として】

 本田先生は「自閉の子はみにくいアヒルの子」だと言います。自閉スペクトラムの人達は、実はアヒル社会にいる白鳥のひなで、別の鳥なのです。そもそも違う種族だと知っていれば、無理にアヒルに近づけるように育てることはしないでしょう。大人の白鳥になるように、「白鳥の子」として育てていけばいいのです。ただ難しいのは、その白鳥を育てる私たち親がアヒルだというところです。私たちアヒルの親には、ちょっとしたコツが必要なのだと思います。大多数がアヒルの世界では少数派の白鳥の我が子が、健康でハッピーに生きるために、アヒル親にできることは、白鳥の世界を知る事です。この子は自分たちアヒルとは違う特性を持つ種族だと理解することです。たとえば、この子には、わかりやすい愛着行動はないけれど、私たちと信頼関係は築けると理解すること。まずは子どもにとって「親=信頼できる人」になる。それから「大事な人」になっていけばいいという順番を知っていたら、子育ての中での、お互いのストレスが減るのではないかと思います。

【こだわり保存の法則とは】

 そしてもう一つ「こだわり保存の法則」という言葉です。○○のこだわりがあると不都合だからと、こだわりをなくそうとすると、別のこだわりが出てきてしまうことは、よくある話ですが、この法則を知っていれば、こだわりをなくそうと親も子も疲れる不毛な戦いをしなくてもすむと思いました。「こだわり保存の法則」とは、エネルギー保存の法則をもじった本田先生の造語で、自閉の人のこだわりに対するエネルギーの総量は一生変わらないということを言ったものです。どんなに理解力が高くなってもこだわりがなくなったり、減るわけではなく、こだわりの全体量は減らないのです。ただいくつかあるこだわりの中で、役に立つこだわり(時間に正確、ルールを守るなど)や、趣味のこだわりの分量を増やすことで、生活に困るこだわりの分量が減っていけば、それでいいというふうに考えるのです。自閉の人に、こだわりはあって当たり前。こだわりは必要なものでもあるのです。

【苦手ではなく、選好性の偏りという考え方に】

 今回の講演会は、自閉スペクトラムの人の特性、支援をもう一度自覚するために本当によい機会でした。特性を話す時に、よく「うちの子は○○○が苦手で‥」と、つい「できないこと」「欠けていること」を考えてしまうのですが、その特性は「〜よりも〜を優先する」という「選好性の偏り」として考えたほうが自然という考え方は、目からウロコが取れたように感じました。これからは、我が子の特性も、「○○が苦手」というよりも「選好性の偏りがあるんだな」という考え方に変えていこうと思います。「特性は生まれつき、でも育ち方は重要」という本田先生の言葉が、身にしみました。

 講演会後の参加者の顔が皆明るく、よい講演会だったと実感しました。私は本田先生の講演を拝聴するのは三回目ですが、その度にこどもへの対応をふりかえり、また新たなやる気を奮い立たせてくださいます。本田先生、本当にありがとうございました。

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